2017年に訪れた美術展を振り返ってみた。毎年言っているんだけど、今年も素晴らしいアートに出会うことができた。

でも一方で、今年は「これは行かなくては!」と思っていた超人気展覧会の多くに行かなかった。時期的な問題もあるんだけど、去年まではなんだかんだ1-2ヶ月に1回は美術館巡りに東京行ったりしてたのになあ。例えばミュシャ、ジャコメッティ、片山正通コレクション、安藤忠雄なんかに行けなかった。トーマス・ルフも吉岡徳仁ソールライターも…。つらいと言えばかなりつらい。

↓ちなみに展覧会入場者数トップ10はこんなカンジらしいです。

ミュシャ、国宝、運慶が60万人超え。 2017年 美術展覧会入場者数 TOP10 – 美術手帖

https://bijutsutecho.com/insight/10195/

今年特に印象的だった展覧会を5つ記しておこう。豊田市美術館の奈良美智展、シカゴ現代美術館の村上隆展、国立国際美術館のライアン・ガンダー展、茶屋町LOFTのクリエイターズファイル展、横尾忠則現代美術館の横尾版画展かな。それぞれ感想を記しておこう。

ちなみに訪れた展覧会を思い起こしてみると多分以下ですべてです。

1/13 クラーナハ展 @国立西洋美術館
1/14 南極建築展 @LIXILギャラリー
2/2 常設展 @シカゴ美術館
2/6 常設展 @コンピューター歴史博物館
3/18 エアラインコレクション @中之島図書館
3/18 台北国立故宮博物院北宋汝窯青磁水仙盆 @大阪市立東洋陶磁美術館
3/4 草間彌生 わが永遠の魂 @国立新美術館
4/29 夢二ロマン @神戸ファッション美術館
6/3 ライアン・ガンダー この翼は飛ぶためのものではない @国立国際美術館
6/22 クリエイターズファイル @LOFT
6/25 ベルギー奇想の系譜 @兵庫県立美術館
7/25 技を極める ーヴァンクリーフ&アーペル ハイジュエリーと日本の工芸 @京都国立近代美術館
8/7 常設展 @Volo Auto Museum
8/10 村上隆 The Octpus Eats Its Own Leg @シカゴ現代美術館
9/9 奈良美智 for better or worse @豊田市美術館
11/6 常設展 @木の殿堂
11/19 横尾忠則 HANGA JUNGLE @横尾忠則現代美術館
12/3 広岡今日子コレクション 装いの上海モダン -近代中国女性の服飾- @関西学院大学博物館

では以下ベスト5の思い出

奈良美智 for better or worse @豊田市美術館

初めて豊田市美術館に行ったのですが、まずもうこの空間が最高でした。谷口吉生による建築、ピーター・ウォーカーによるランドスケープ。9月という時期も完璧でした。奈良美智展もかなりマスターピースの集まっていました。これだけの奈良作品を一度に見れる機会、次いつあるんだろうなあ。これは本当に行けてよかった。

村上隆 The Octpus Eats Its Own Leg @シカゴ現代美術館

8月にシカゴに行ったのだけど、たまたまその時村上隆が個展を開催していた。これはもうものすごくよかった。数年前に森美術館で開催された村上隆の五百羅漢図展とは全く違った。まずそれがとても興味深かった。五百羅漢図展では超絶技巧とパッションが伝わる構成で、展示作品を近作のみにかなり厳格にコントロールされていた印象だった。一方でシカゴでのこの展示は、入り口で村上が10分以上自分のアートワールドでの立ち入りを語る動画が流される。またポップ以前の戦争画のような、キャリア初期の作品から広く展示が構成されている。制作光景の動画なんかもあり、ここでは制作のパッションというよりは、いかに作品を完成させる組織が高度にできているかという、映画スタジオのようなさまが伝わってきた。六本木での個展ではまったく伝わってこなかったさまだ。また、最終盤ででてきた新作は圧倒的なクオリティだった。過去に存在したすべての日本画とグラフィティ作品を蹴散らしていた、とまで感じた。カタログに載っていなかったのは本当に残念。これも本当に行けてよかった。

国立国際美術館でのライアン・ガンダー展は、まさしく現代アートの魅力が伝わってくる素晴らしい展示だった。インタラクティブで、空間を伸び伸びと使っていて、サンプリングやリミックスが効いてて、五感に訴えかけてくる。ガンダーのアトリエ紹介やインタビューの20分近い動画も本当に素晴らしかったな。ガンダーは郊外に広いスタジオを設けて、アイディアをとにかくストックしている楽しげで実験的な空間で過ごしている。一方でロンドンにオフィスがあって、そこではアイディアを実現させるコラボレーターを探したり日々のオペレーションをこなす優秀なスタッフが働いていて、さながらスタートアップのような雰囲気がある。現代アートってこうやって生まれてるんだな!という感じ。楽しかったな〜。

ロバート秋山によるクリエイターズファイルシリーズは、今年の日本で最も多作でバズを生んだアートワークだと言ってもいいんじゃないかな。TEDで似たようなこと(架空のアーティストを作り上げてなりきること)をして「1人アートフェスティバル」をしていた人がいたけれど、ロバート秋山はそれ以上だと思う。シリーズはyoutubeで公開してキャラクターの物語を作って認知させる。その中で人気のキャラクターは追加で映像作品やグッズを製作する。なんならキャラクター単位でCM活動とかもしてたからな。その行為がもう現代アートっぽい。大阪の茶屋町LOFTで開催されたこの企画展は、今までで1番美術館で笑った経験になった。コンパクトなスペースに所狭しと作品が並んでいて、スペースの割にはかなりの時間を過ごした。忘れられない展覧会になった。

横尾忠則現代美術館で見た横尾の版画展も最高でしたね。訪れた日がたまたま無料で観覧できる日だったのも嬉しかった。この展示では横尾忠則のデカい版画・シルクスクリーンばかりが展示されている。めちゃくちゃ贅沢でした。横尾忠則、アンディ・ウォーホルに負けてないな、とか、今の世界のポップアートにめちゃくちゃ影響与えてるんだな、なんて感じるイケイケの作品たち。強い。あの美術館は贅沢なのよね。周りにごはんの美味しいお店も多いし、兵庫県立美術館からも歩いていけるし。横尾のコレクション、他にそんなに見れないでしょ。ミュージアムショップがイマイチなのが玉にキズだけど。

以上の5つが2017年に特に印象に残った展覧会でした。特に村上と奈良の大規模な個展は本当に贅沢な体験だった。来年も現代アートを中心に、今年以上に足を運びたいと思います。ギャラリーにもたくさん行きたいし、作品も欲しい。